トリ男ログ

ちょっと田舎の公務員のログ。

人新生の「資本論」をすべての公務員が読んだ方がいいという話

大阪市立大学の斎藤幸平さんの今話題の書籍人新生の「資本論を読んでみました。

結論からいえば、この本は、今を生きる大人たちは皆読むべきです。

特に、私たち公務員という施策を立案し実行していく立場の人間にとっては参考となる視点が多く含まれているため、ぜひおすすめしたい一冊。

ざっくり本書の内容をまとめると、

経済成長を求める、気候変動によって人類は滅亡してしまうので、大人たちよ、今すぐに経済成長を求めるという考えを改め、脱成長の社会を築こうではないか。

 というものでした。

具体的な内容を解説します。

目次

 

 私たちの豊かな生活は、他の犠牲の下で成り立っている

 産業革命以降の先進国の発展は、発展途上国の犠牲の下で成立しており、先進国の豊かな生活の代償として、途上国では貧しい暮らしや、劣悪な労働環境、そして環境破壊を強いられてきた。そして先進国の住民は、そんなことは考えずに、またはなんとなく気づきながらも気づかないふりをしてその恩恵を享受しているのだと著者は言います。

思い当たる節がありませんんか。なんでユニクロは高クオリティでこんなに安いの?なんでこの果物こんな価格なの?と思ったことはありませんか。

著者によると、それは、その分見えないところ(途上国)に代償を転嫁しているからということです。
なんとなく、分かってたよね。‘物価が安い’だけでは説明できない何かがあるってことを。そのうえで「見えない(見ない)」ふりをしてきたのではないかって。

そして、私たち大人は、同じように気候問題という地球規模の問題を将来の人類に転嫁しようとしており、著者は「大洪水よ、我が亡き後に来たれ」と表現しています。

SDGsグリーンニューディールでは、地球の破壊は止まらない

気候変動がヤバいということで、大人たちも馬鹿じゃないので、近年、気候問題も含めたSDGs(持続可能な開発目標)が掲げられ、買い物袋をエコバッグに、包装もプラから紙へ、さらには環境負荷の小さい電気自動車へ・・・と日本でもエコな動きが出てきてます。

さらにはアメリカでもグリーンニューディールが掲げられ、温室効果ガス排出ゼロ等が目標とされています。

これで万事解決・・・とはいかない、こんなものはまやかしでしかなく、温室効果ガスも全然減らないし、環境破壊も進むと著者は言います。

電気自動車が普及したとしても、その製造過程では多量のCO2が排出されることから、CO2の排出量は1%しか削減されないし、エコバッグでは‘やってる感’があるだけで効果はほとんどないよね、ということです。

「脱成長」だけが残された道

 では、どうするのか。

残された道は、「脱成長」しかありません

資本主義に身を任せ、経済成長を求めたままでは、結局地球上のどこか、または未来にその代償を転嫁するだけで、何の解決にもならない。本気で未来の人類のために動くなら、こんなことを大事にしようと、著者はいくつかの視点を挙げています。

  • 電気、医療、水、住居等人が生きていく上で(社会的に)重要なものを、国や企業任せにせずに市民で非営利的に管理することで豊かな資源を取り戻せる。
  • ブランド化による希少性の付与、人々を消費に駆り立てるようなことはやめて、本来の価値(使用価値)を大事にしていこう。
  • 介護、教育、福祉等のエッセンシャルワークをもっと大事にしよう。

いずれも、実質的に、人が生きるために重要なものの価値をしっかりと認め、大事にしていこうよということですね。こうすることで、過度な経済成長を求める仕組みである資本主義にブレーキをかけ、過度な開発、環境破壊を止めることにつながるというものです。

私たち公務員はどう考え、どう動くのか

 この本を読んで、私は率直に、そうだよね、そのとおりだよね!と思いました。
が、一方で、いち地方公務員としては、話が大きすぎるな・・・とも。

本書の最後で、著者はこんなことを言っています。

3.5%の人々が非暴力的な手段で立ち上がれば社会は大きく変わる

 話が大きすぎる一方、小さな町(自治体)だからこそ、町を大きく変えることができるんではないだろうか。国の3.5%より、地方の町の3.5%はそんなに大それた話ではないのではないかとも思えてきます。

いずれにせよ、本書は、世界の大きな流れの中でも本質を見誤らないという点では、非常に参考となる1冊。

資本論、人新生が分からなくても大丈夫です。公務員の皆さんはぜひ読んでみてください。